プリントパックやラクスルなど、オンラインで印刷を頼める業者があります。料金も安くてぜひ使いたいサービスなんですけど、ハードルがあります。

「完全データで入稿してください!」と言われることです。業者側でなんの加工もせずに印刷のラインに乗せることができるデータをください、っていうことです。料金の安さは業者側でデータを加工しなくていいところに理由の一つがあります。

完全データにするための一つの要素が塗りたしです。データを渡すと「適切な塗りたしをつけてください」と言われることがあります。「塗りたし」って、なんなんでしょうか?

完成サイズより大きく作る

A4サイズは「210 x 297 mm」です。それなら必要なデータの大きさも「210 x 297 mm」のはずです。そう思ってこのサイズでデータを作って業者に渡すと「塗り足しがないです」と言われます。塗りたしっていうのは「完成サイズより少し大きく作ってください」っていうことなんです。なんで?

社内の印刷と順序が違う

その前に。印刷は業者に頼まなくてもプリンターがあれば自分でできますね。でも印刷業者と自分で印刷、作業の順序が違うんです。

  1. A4サイズでデータを作る
  2. A4サイズの紙をプリンターに入れる
  3. 印刷される

プリンターで印刷するときはこうです。

印刷会社の場合はこうなります。

  1. A4より少し大きなサイズでデータを作る
  2. A4より一回り大きな紙に印刷する。
  3. A4サイズに切る

家庭用のプリンターみたいに最初にA4の紙を準備しておいた方が早いはずなのに、なんでこんな順番にしてるのか?

紙の端まで印刷したくない

家庭用のプリンターを選ぶとき、「フチなし印刷可能」と書かれていることがあります。紙の端まで印刷できる機能です。そんなの当たり前じゃないか、と思うかもしれないですけど、これ、当たり前じゃないんです。

  • プリンター内部が汚れる

フチまで印刷しようとしても、どうしても少しはみ出たりします。そのはみ出たインクはプリンターの内部についてしまいます。そして次の紙についたり、汚れとしてプリンター内部に溜まることになります。これはかなりのデメリットです。業者としては採用したくない方法です。

  • 紙を掴む場所がなくなる

プリンターの中で紙は行ったり来たりしています。端っこまで印刷するとしたら、どこを持てばいいの?…紙を掴むための余白が必要です。周囲4〜6mm程度の余白が必要です。書類ならこれでいいんです、一番端っこまで印刷することはほとんどないですから。でもデザインを重視したチラシやパンフレットの時、周囲に余白が残るのは困ります。

  • 印刷は必ずズレる

印刷は、物理的な作業です。作業の誤差が必ず発生します。もしぴったりのサイズのデータで印刷して紙がズレたら、印刷されないところが白く残ってしまいます。

これを解決する方法として、完成サイズよりも大きなデータを準備して、印刷の後でカットするという方法が国際的にもスタンダードになっているんです。そして完成サイズよりも少し大きく作るそのエリアのことを「塗りたし」と呼んでいるんです。

各辺3mm大きくする

具体的にどれぐらい大きく作ればいいのか?これも決まっています。3mm大きく作るのが業界スタンダードです。A4なら完成サイズは「210 x 297 mm」です。塗りたしを含めると、各辺に3mm足すので「216 x 303mm」になります。

トンボ

印刷した後、カットします。どこでカットするのか目印が必要です。その目印は「トンボ」または「トリムマーク」と呼ばれています。トンボは2種類あります。国際スタンダードと日本式です。日本国内での標準はもちろん日本式です。国際スタンダードが完成サイズしか示していないのに対し、日本式は完成サイズと塗りたしまでわかる優れものです。

例として「100 x 100 mm」のデザインをした場合は、こんな感じになります。

デザインをするとき、周囲に余白が残るというのは、大きな制限です。社内プリンターを使ってデザインをする場合でも一回り大きな紙に印刷して、あとでカットする方法でやってみてください。デザイン事務所でも、社内でデザイン案を確認するときはこういうやり方をします。完成サイズがA4なら、一回り大きなB4の紙でプリントアウトしています。

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