一般の会社でデザイナーとして働いていた時、同僚の人から冗談半分で「坂本さんはアーティストだから」と言われることがありました。確かにデザイナーとアーティスト、見た目が綺麗なものを作るのが仕事、っていう共通点がありますね。でも実際はデザイナーは、自分で絵を描くことは求められていないんです。求められるのは、必要な写真やイラストを選ぶ能力です。
そうだとしても、自分がデザイナーになることを想像すると「そこまでセンスはないから」と尻込みしてしまいませんか?そもそも「センス」って何なんでしょう?
センスって何?
逆の場合を考えてみましょう。センスがないとどうなるか。僕自身で考えると、ギターがとても好きで、安いギターをこれまで何10本買ったかわかりません。ここをこうすればもっと弾きやすくなると思って、改造したり分解したり、挙句自分で図面を引いて、木を切り出してオリジナルギターを作ることまでやりました。
時間もお金もエネルギーもたっぷり注ぎ込んだんですけど、全然上手くなってないですし、当然ギターでお金を稼ぐなんてとんでもないわけです。悲しいことに、センスがないってこのことですよね(笑)
まさにセンスがない、というぴったりの例なんですけど、今から考えるとこれ、「空回り」なんですよね。センスがない、っていうのは空回り。努力の方向が間違っている、というより努力の方向がわからない。熱意はあるからジタバタとエネルギーは使うんですけど、それが前進のために使われない。これがセンスがない状態ですよね。
センスの正体
センスがあるとどうなるかっていうと、まず目指すべきゴールがわかっていて、さらに今のズレを軌道修正する方法がわかっている。この二つが揃っているとセンスがいい、っていうことだと思うんです。誰に教えられるわけでもなく、目的と修正方法がわかっていることは、「あ、この子うまい、才能ある!センスいい!!」ってなりますよね。
僕のギターの場合は、思った音が出ないのはギターのせいかも多少はあるかも知れない、でもその前に弾く方に注目しなさいよ、っていう(笑)
センスを身につける方法
目的と修正方法を知っているかどうかが「センスある・ない」の分かれ目なんだから、「あー自分にはセンスがない…。」って落ち込むんじゃなくて、単にそれを知れば済むじゃないですか。目的と修正方法、ゴールはここ、右に行きすぎたらハンドルを左に、左に行きすぎたらハンドル右に…簡単なことですよ。
デザインのセンスは何かって考えると、まずゴールを知っていること。例えば今回は「楽しい印象」にしたいっていうのがゴールだな、って言うのがわかってこと。そして、楽しくするにはどうすればいいかわかってるってこと。これができればセンスがある、ってことになりますよね。
楽しくするにはどういう配色がいいか、どういうフォントがいいか、どう言うレイアウトがいいか。やってみてちょっと弾けすぎだと感じるなら、少し抑えるにはどういう調整をすればいいか。こう言うのはすでに理論としてあるものなので、勉強すればそれでいいし、配色のガイドブックを手元に置いておけば済むこと。
自分のセンスにそこまで自信はない、って尻込みしてるなんて勿体無いですよ。
説明できることが大事!
それと一番大事なこと。デザインは、作ったら必ず説明する必要があるんですよ。例えばA案、B案、C案と3つぐらい作ることが多いんですけど、A案はインパクトを重視した、とか何でこのデザインになるのか説明して上司とか社長とかに説明して選んでもらわないと、相手はデザインの意図がわからず、「私はラッキカラーがオレンジだからB案」とか、普通にそんな選び方されてしまうんですよ、ほんとに。
直接社長とか決定権がある人に自分で見せるときはまだいいんですよ。部長に渡して部長から社長に選んでもらうって言うシチュエーションだったら、社長に「なんで背景は黄色なのか?」と聞かれた時に、理論がないと「あー、デザイナーの感性が黄色と言っていたらしいです」とか、もうあり得ないですよね。
だからデザイナーは何だかよくわからないけどパッと思い浮かんだっていうインスピレーションに頼るより、理屈・理論で組み立てた方がいい仕事なんですよ。
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